周囲と比較せずに自分自身の価値観で生きる教え「足るを知る」

最近の高所得世帯に対する増税、子ども手当の改悪、特別給付金の除外などを受け、日本の将来に不安と不満を覚える人も少なくないと思います。

SNSやネットニュースのコメントでは「年収1,000万円程度では生活に全く余裕がない」といった、高年収ながらも手取り額が少ないことを嘆く意見が数多く書き込まれています。私も子ども2人を育てる普通のサラリーマンなので、その気持ちは痛いほどわかります。

一方でお金に余裕がないなら自分に見合った生活をしたほうがいいのでは?と思ってしまう節もあります。世帯年収1000万円以下の家は世の中にたくさんあって、それでも普通に暮らしている人たちもいるからです。

もちろん持ち家を買って、自家用車をもち、子どもを私立中学校に通わせ、毎年豪華な旅行に出かける。ひと昔前まで可能だったフルスペックな生活を送ることは難しくなっています。

どこかを妥協して自分たちの収入に生活水準を合わせる必要がでてきます。

そこで自分自身に合った生活水準の指標を作る必要があります。他人の価値観ではなく、自分自身の価値観を軸として考えることが重要です。

その指標を作るうえで役立つ考え方が「足るを知る」です。

やりたいことを全て叶えようと思うと際限がありません。パーキンソンの法則のように収入が増えるほど支出が比例して増えてしまえば生活はいつまでも厳しいままです。

1日も早く負の連鎖を断ち切って、お金はそこそこでも幸せに生きていく方法を見つけましょう。今回は質素な生活でも心を豊かにする「足るを知る」ということについて考えていきたいと思います。

現代の庶民は昔の貴族より立派な生活をしている

名勝 仙巌園 - 出典:かごしま観光なび
名勝 仙巌園 – 出典:かごしま観光なび

先日鹿児島県の仙巌園という島津家が代々継承してきた立派なお屋敷を見学してきました。錦江湾を隔てて桜島を借景とする広大な庭園を歩いていると、まさに当時の殿様気分を味わうことができます。

最後の藩主となった島津忠義は約25部屋からなるこの立派な屋敷で、家族や従者とともに明治30年に亡くなるまで暮らしたそうです。

豪勢な屋敷で殿様気分を味わうことができたのも束の間、冷静に当時の生活を想像してみると不便な点も結構みつかります。環境一つとっても内側の部屋は日陰で暗く、寒い時に訪れたこともあってすき間風と足場の冷たさで体の芯から冷えました。

130年前の贅を尽くした当時の最高級住宅よりも、現代の6畳一間の方が圧倒的に住みやすいことに気付かされます。

機密性の高いマンションにすき間風は吹きませんし、クーラーや暖房器具で一年中過ごしやすい温度にコントロールができます。家事は従者がやってくれるわけではありませんが、時短家電や宅配や外食に頼れば大変なことは何もありません。

水洗トイレは私たち庶民の生活の質を一気に引き上げてくれました。夜になればLEDが明るく部屋を照らし漫画や映画を楽しむことができます。まさに一国一城の主です。

家について考えていた時にちょうど仙巌園を訪れて悟ることができました。それは「足るを知る」ということです。

今の時代でもお金をかければ立派な家に住むことができます。その家は現代においては立派かもしれませんが、また130年もたてばその時代の庶民の方が機能の優れた家に安く住んでいることでしょう。

 

いつの時代にも立派な持ち家に憧れる人がいます。中古の賃貸よりも、きれいな新築一戸建てのほうに誰だって住みたいです。

ただ、「足るを知る」ことも大切です。豪華でなくても自分の人生を満足させることができる家を見つけることができればいいのです。(一度住んでみてやっぱり違うと思えば住み替えができる点は賃貸のいいところです)

つまり周囲と比較して相対的にいい家に住むことに大きな価値はありません。長い歴史の中のたった一瞬に自分がいることを考えると、周りと比較して立派な家に住もうとすること自体が滑稽ですらあります。

大事なことは、今の自分が背伸びせずに幸せを感じることができるレベルを知ることです。「足るを知る」ことができればきっとお金持ちに近づくことができます。

近所で1番立派な家を建てた両親

私の両親は50代半ばで2度目の持ち家を買いました。大手住宅メーカーの立派な注文住宅で、正確な値段は教えてくれませんでしたが上物だけで3000万円以上はする豪華な家です。

3人の子どもが全員自立したことで家計に余裕ができ、長年勤めた会社からの退職金も計算できたことで終のすみかとして長年の夢を叶えたかたちだと思います。

建てた頃は「近所でも私たちの家が1番立派」と母親が誇らしげにしていたことが印象的でした。ただ、貯蓄はほとんど切り崩したようで定年を迎えた今は年金を頼りに質素に過ごしています。

賃貸派である私の価値観と、持ち家派である両親の価値観は全く異なります。生きてきた時代が異なるので、価値観が異なることも当然です。

私は正直にいうと、立派な持ち家よりも手元に資金を残しておく方が重要だと思っています。他の家と比べて自分の家が相対的に立派である必要性も全く感じません。

家に貯蓄の大半を使うくらいなら、そのお金を運用しながら普段の生活を切り詰めなくてよい老後をおくるほうが幸せだと思ってしまいます。

お金があることによる心の安寧と、働かないことで得られる時間のほうが自分にとって大切だからです。

どれだけ豪華絢爛な家を建てても、100年もすれば島津家のお屋敷のように不足がいくつもみつかるでしょう。私は「足るを知る」を意識しています。

両親の選択を否定する気は一切ありません。たった一度の人生です。住み心地のよい家を作ることは人生の成果として十分に成立します。

私も立派な家には憧れたりします。ただ、普通の安い賃貸住宅でも結構幸せに暮らせることも知っています。

車も所有する必要はない

足るを知るを実践できるのは家だけではありません。わが家の場合は車も所有しないようにしています。昔は車を持っていましたし、小さい子どもがいるので車があれば便利であることは百も承知です。

また、生活のためにどうしても車必須の方がいることも理解しています。

わが家は移住する地域を選ぶ前提として、「車を所有しなくても生活できるところ」という条件を設定していくつかの選択肢の中から福岡市を選びました。おかげで生活は自転車と公共交通機関で基本的に事足ります。

子どもとお出かけするときは自家用車が欲しいと思うことも多々ありますが、レンタカーとタクシーを活用することで車を持たないことを徹底しています。

福岡市くらいの大きな都市でも、私たちのような子育て世代で車をもっていない家庭は少数派です。子持ちの同僚に車を持っていないことを言うと結構驚かれます。

おかげで車の維持コストは1円もかかりません。以前別の記事でまとめましたが、車の維持費は年間50万円以上しますので家計へのインパクトは結構大きいです。

<自動車の維持費>

自動車の維持費
税金 自動車税・軽自動車税
重量税
保険・金利 自賠責保険
任意保険
ローン金利
走るための費用 駐車場代
ガソリン代
高速料金
整備・消耗品費用 車検代
オイル・エレメント代
タイヤ代
修理代
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ここでも足るを知るを意識しています。車はあれば絶対に便利だし欲しい気持ちもありますが、なければないでなんとかなるものです。

そもそもほとんどの車は1日のうち 90%以上は止まっているようですね。また、昔の人は馬や徒歩で移動していたことを考えれば、電車やバスやレンタカーは天国のように楽な移動手段です。

欲望に優先順位をつける

よくよく考えたら必要のない保険に入っていないでしょうか?豪華な旅行もいいですが、近場の節約旅行もそれはそれで楽しいです。デートでアメックスカードを使うのはかっこいいかもしれませんが、楽天カードでもいいですよね。子どもの学校も絶対に私立に行かせなければならないわけではありません。

バビロンの教えにあるように、欲望に優先順位をつけることが大事です。お金を払っている一つ一つのことに自分で腹落ちできる説明ができればお金に困ることはなくなります。

質素な賃貸住宅、車は所有しない、保険は必要最低限、できるだけ自炊、旅行は近場で楽しむなどを徹底し、「子どもの教育費はしっかり使う」と割り切るような考え方でもいいと思います。

わが家は家・車・保険にかけるお金は徹底して合理化しています。旅行も移住して間もないこともあって近場でめちゃくちゃ楽しめています。その代わり食費で贅沢をしています。メリハリをつけて生活を豊かにすることを心がけています。

モリタ家のメリハリ

  • 手出し4万円の賃貸住宅
  • 車は所有しない
  • 保険料は0円
  • 旅行は近場で楽しむ
  • その代わり食費で生活を豊かに

さいごに。家族で目標を共有することがなにより大事。

今回は生活の満足度を維持したまま生活水準を落とす考え方についてご紹介しました。他人の価値観ではなく自分自身と向き合うことが重要です。

他人の100万円よりも、自分の100円についてしっかり考えていきましょう。

もし家族がいるなら家計改善の目的や目標は共有しながら一緒に取り組みましょう。お金の課題はひとりで解決するものではありません。家族でビジョンを共有しながら一緒のゴールに向かって走ることが大切です。

自分自身の価値観と向き合うために、まずは「見栄」から取り除いていきましょう。なぜなら見栄は相対的な価値観から生じるものだからです。

ひとつずつ自分自身の軸で考えて腹落ちできるお金の使い方を意識していきましょう。

本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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